

2009年7月。都内の撮影所で、ある作品がクランクインした。監督は「Shall we ダンス?」(‘96)や「それでもボクはやってない」(‘07)などの話題作で常に独自の視点で国内に留まらず
海外でも注目を浴びてきた周防正行。彼が新作に選んだ題材は「バレエ」と「チャップリン」。
撮影所の中に組まれたセットは床、壁ともに真っ黒。台本は、なし。周防の掛け声が響き、
音楽とともに登場したのは軽やかに舞うチャップリン? “美しいバレエを映画にする”ために新しい試みが始まった。
監督が選んだのはフランスの巨匠振付家ローラン・プティのチャップリンを題材にした
「ダンシング・チャップリン(原題:「Charlot Danse avec Nous(チャップリンと踊ろう)」)」。
チャップリンの数々の名作がバレエとして表現された作品である。「ダンシング・チャップリン」は
1991年の初演からチャップリンを踊り続けるダンサー、ルイジ・ボニーノのために振り付けられた作品であり、
世界で唯一この作品のチャップリンを踊ることができるバレエダンサーである。しかしルイジも還暦を迎え、肉体的に限界を迎えつつある。
このままでは幻の作品になってしまう! と危機感を感じた監督の強い思いからこの企画がスタートした。
本作『ダンシング・チャップリン』は映画化にむけて監督がイタリア、スイス、日本を巡り、草刈民代をはじめとする世界中から集まった ダンサーたちの舞台裏60日間の記録である「アプローチ」を第一幕に、プティの「ダンシング・チャップリン」の全20演目を13演目に絞り、 監督が映画のために再構成・演出・撮影された「バレエ」を第二幕とし、最高に美しい体験をする事が出来るエンターテインメントに仕上がった。

2009年にバレリーナを引退し、女優へ転身した草刈民代。2010年はNHK大河ドラマ「龍馬伝」での一人二役、究極の肉体美で世間を驚かせた写真集「BALLERINE」(幻冬舎)などで話題をさらった。 夫の周防監督との出会いとなった「Shall we ダンス?」(‘96)ではヒロインを務め、映画初主演にして日本アカデミー賞主演女優賞と新人俳優賞をダブル受賞した。 本作では、『街の灯』の盲目の花売り娘をはじめ、コミカルな表情で楽しませる『キッド』のキッド役まで、女優としての才能も発揮して全7役をこなした。 まさに彼女の36年のバレエ人生の集大成ともいえる最後のダンスとなった。
そして本作は監督の、バレリーナであり妻でもある草刈民代へのオマージュともいえる愛のメッセージである。バレリーナの夫として15年。 バレエの世界に魅了されてきた周防正行がフィルムに残したかったもの。それは振付家、衣装デザイナー、バレエダンサーそれぞれが美を追求する姿、 そして完成された美しい舞い。映画ファンもバレエファンも見逃すことのできないバレエ映画が誕生した!